メガネを作る時良く見える度数を選びたくなる方が多いですが、メガネの過矯正は眼の疲れの原因になることをご存知ですか?
ここではメガネの過矯正について解説し、メガネの度数をどう合わせるべきかを考えていきます。
メガネだけでなく、コンタクトレンズやICL、レーシックなどの度数選びの時にも共通して言える話なのでぜひ参考にしてみてください。
【自己紹介】
眼科勤続年数・約15年の現役視能訓練士(国家資格保有の眼科検査員)です。
関東の端っこの小さい病院で細々と眼科検査に関わっています。
メガネ処方もしますが、合わない度数のメガネをかけている人が多いのが気になるこの頃です。
メガネの過矯正とは?
ここでお話しするメガネの過矯正とは「近視」が前提としていますが、近視の方がメガネ度数を過矯正にすると「常にピント合わせをさせている状態」になり、これは眼精疲労に繋がります。
ですが一般的には少しの過矯正であるほうが「2.0まで見える」など、見え方がよりくっきり・良好になるため、過矯正を好んでメガネ度数を選ぶ人も多くいます。
つまりメガネの過矯正は、
見え方がよりはっきりする反面、眼精疲労などの不調が出てくる状態のことです。
メガネの過矯正を勧められない理由
過矯正を好む人が多い中、メガネ処方をする立場からするとメガネの過矯正は実は勧めたくありません。その理由として
などが挙げられます。以下に一つづつ解説していきます。
眼が疲れる
過矯正という状態は「常に眼に力を入れ続けて物を見ている状態」です。荷物を持ち続けると腕や肩が疲れてくるのと同じで、強い眼鏡をかけることで眼に常にピント合わせを強いて眼精疲労につながります。
全身の不調が出る
眼のピント合わせしている筋肉・毛様体筋が自立神経に関与しており、過剰に負担を強いると自律神経のバランスが崩れてしまい頭痛・めまい・吐き気などを起こす可能性があります。
近くの物を見る機会が多い
遠くがよく見える度数のメガネをかけて近くの物を見ると、それだけでピント合わせをしています。
パソコンを一日何時間も使用している人が遠くがよく見えるような度数のメガネでパソコンを見続けると眼は疲れます。そこに遠くの物を見る度数を過矯正にすると、近くの物は更なるピント合わせの力が必要になりすぐに眼精疲労を起こすでしょう。
一番のベストは、遠く用と近く用のメガネがあると楽です。
それか遠く用のメガネの度数を少し弱くして和らいでおくと、近くの物を見る時の眼精疲労は少し落ち着きます。
近視がすすむ可能性(主に子ども)
過矯正とは、本来自身が持つ近視度数よりも強い度数でメガネをかけることが、眼軸(眼の長さ・大きさ)を伸ばす原因になります。眼軸が伸びれば伸びるほど近視は進んでいき、これは子どもに起こりやすいです。
近視は20歳前後まで進むと言われているので、過矯正メガネをかけることで近視を進ませる要因を増やしたくないところでもあります。
ここだけの話、
実は過矯正を強く望む人に過矯正の度数で処方しないとトラブルになることがありますので、本人の納得の元であれば過矯正で処方することも多々あります。。
過矯正が悪ではありませんし、より鮮明に見えたい気持ちもよくわかります。
ですがその反面、眼精疲労も起こりうることは理解してもらってます。
メガネ度数はどう合わせるべき?
「良く見える」=「メガネ度数が合っている」わけではありません。本当に眼に合っている度数とは「楽に良く見える」状態の事を言います。ではそれはどう合わせたら良いのでしょうか?
1.0くらいの視力
右眼も左眼もそれぞれ片眼1.0くらいのものが見えるように合わせると、両眼で見たとき1.2くらいは見えます。鮮明さが若干落ちるような感じがありますが、車を運転するにも遠くのものを見るにも問題ない視力値です。
これより1~2段階ほど度数を強めると両眼で1.5か2.0くらいまで視力が出て鮮明にくっきり見えますが、その状態だと若干過矯正の状態でもあります。それ以上の度数を強めるとしばらくは1.5か2.0くらいの視力値が出ますがどんどん過矯正となり、あまりに過矯正にしすぎると今度は視力が下がってきます。
理想は、片眼1.0、両眼で1.2くらいが良いでしょう。
実際は、片眼1.2、両眼で1.5くらい見える度数を希望する人が多く、このくらいなら許容範囲でもありますが、わずかに過矯正気味であると思ってください。
近くを見る用のメガネがあると良し
若い方だと近く用のメガネと言われてもピンと来ない方も多くいますが、パソコンやスマートフォンを長時間見るような方にはその距離の物がよく見える度数のメガネを持っているのも選択肢の一つです。
そういった近く用の度数では遠くの物はよく見えませんので、あくまでパソコンやスマートフォン用です。眼への過剰な負担を強いることなくだいぶ楽に物を見れるので、もし眼精疲労に悩んでいる方は一つあると便利です。
小中学生のような子どもは近くの物を長時間見続けてもあまり眼精疲労を訴える事はありませんので、近く用のメガネをあえて使用する必要はないように感じます。
どちらかというと、小中学生には時間を限定してタブレットなどを使用する方がbetterですね。
過矯正かどうかを調べる方法
では過矯正かどうかはどうやって調べるのでしょうか?眼科で一度はやったことがあるかと思いますが、以下のような事で過矯正かどうかを調べています。
赤緑テスト
赤や緑色の上に書かれた黒字の文字はどちらがはっきり見えるかによって過矯正かどうかがわかります。
理論的には緑の方が濃い場合、その度数は過矯正です。できるだけ、緑と赤と同じくらいか赤の方が若干濃いかなと思うところあたりがちょうど良い度数だとされています。
薬剤を使用した検査
普段からピント合わせをしすぎて眼を駆使している人は、意識していなくても眼に常に力が入っている場合があります。そうすると普通に視力検査して近視度数を調べていても、眼に力が入った状態だと正しく近視度数を調べることができず、視力1.0が見えた度数が実は過矯正だったということもあります。
そこで眼の力を取り除いて、その人の持つ正しい近視度数を測定するために目薬を使って調べることがあります。これは主に子どもにおこなわれる検査ですが、大人もICLやレーシックの度数を決める時に念には念を押すためにこの検査をおこなう病院が多くあります。
その人が持つ正しい近視度数を知る事で、普段かけているメガネが過矯正かわかります
まとめ
メガネの過矯正について、主に眼の疲れがおこることをまとめました。
物を見るためにも眼にはいつも頑張ってもらってます。たまには休ませてあげられるよう、メガネの度数にも気にして選んでみてください。
**こんな眼のリラックス方法もありますよ**