ICLやレーシック検査、子供の検査など「当院の眼科検査は視能訓練士がおこなっています」などと紹介する眼科がありますが、視能訓練士って誰なのかご存知でしょうか?
ここでは現役視能訓練士歴約15年の私が視能訓練士とはどんな人なのか、どんな仕事をする人なのかを解説します。
眼科検査は奥深く、誰がやっても同じ結果が出るわけではありません。検査結果はその後の診察に直結しますし、検査によって子供の弱視や斜視などの治療を成功させたり、手術のための検査であれば手術後の見え方に大きく関与します。
医師が信頼をおく視能訓練士について、この記事からぜひ知ってみてください。
【自己紹介】
眼科勤続年数・約15年の現役視能訓練士(国家資格保有の眼科検査員)です。
関東の端っこの小さい病院で日々検査業務からオペの準備等に関わっています。
「視能訓練士」というマイナーな職について、ご紹介します。
視能訓練士とは?
視能訓練士とは眼科で働く眼科検査のスペシャリストでもあります。
あまり聞きなれない職業ですが、眼科で検査している人の中には視能訓練士も多くいて、意外に身近な存在です。
国家資格の一つ
視能訓練士は1971年制定の視能訓練士法に基づく国家資格です。
数年間、定められた学校に通い単位が認定されると国家資格の受験資格を得ることができ、国家試験を受験、試験を合格すると視能訓練士の資格を取得することができます。
当初は弱視や斜視の訓練をおこなうための資格でしたが、今は仕事内容は多岐にわたり眼科の領域を全体的に網羅しています。
役割
眼科検査をすることが一番の大きな役割です。
一般的に知られているよりも眼科検査の内容はかなり多く、視能訓練士でも全ての検査を問題なくおこなえる人は意外と少ないですが、医師の指示の下検査をおこない正しい検査結果を出すことで診療のサポートになるような役割を担っています。
また訓練やリハビリに関わり、サポートをすることもあります。
視能訓練士の仕事内容
視能訓練士の仕事内容は大きく4つに分かれています。それぞれ解説していきます。
視機能検査
視力検査や視野検査、眼底検査など、眼科外来でおこなう検査の全てを医師の指示の下、視能訓練士がおこないます。
内科や外科などと違い眼科の検査の数は比較できないほどたくさんありますし、検査員の技量によっては検査結果も違ってくるので、正しい検査結果をできるだけ素早く出せるように日々努力をしています。
他にもメガネを処方したり、コンタクトを合わせたりする仕事から、ICLやレーシック、白内障手術のための検査をする仕事だったり内容は多岐にわたります。
視能矯正
主に子供の斜視や弱視で視能矯正をすることで改善が期待できる場合は視能矯正をおこないます。
個人的には、子供の弱視や斜視に関しては医師よりも深い知識を持ち合わせていると感じています。
実際、子供の眼のことについては苦手と感じる医師も多く、診断に関して視能訓練士を頼っているケースはよく見られます。
健診業務
企業の健診業務から3歳児健診などの業務をおこなう役割もあります。
ここでは主に異常があるかどうかの判別をおこない、何かあった場合は眼科で精査するよう促します。
ロービジョンケア(リハビリ)
身体障害者手帳を保有する、もしくはそれに相当するくらい見え方に困っている人に、生活のサポートをおこないます。
ルーペや遮光眼鏡、拡大読書器などの提案をして少しでも快適な見え方ができるようお手伝いしています。こういった見え方についてのリハビリをおこなうので、最近では眼科内だけでなく介護施設で視能訓練士を募集している所もあるようです。
眼科検査員は全員視能訓練士なの?
眼科にいる人は全員視能訓練士の国家資格を持っている人なの?と思われがちですが、実はそうではありません。
OMAや無資格者もいる
現在では廃止されていますが、OMAは眼科検査員としての民間資格を保有している人が検査をしている場合があります。視能訓練士のように学校に数年間通って国家資格を取得するのではなく、簡単な試験で資格を取ることができるので知識量としては浅く、OMAは主に視力検査を任されることが多いです。
ただし現在では廃止されている資格なので、若い方で視能訓練士でない場合は無資格者が検査している可能性もあります。*看護師が検査していることもあります。看護師も眼科検査をしても良い立場ですが眼科検査については視能訓練士よりも知識量は劣ります。
本来は視能訓練士が検査するよう決まりがあるのですが、視能訓練士の数の少なさ・人員の足りなさにより、OMAや看護師の他にも受付の方などの無資格である者が検査をおこなうこともあります。
視能訓練士ORTと、OMAや看護師の違い
無資格者となると眼科検査について知っていることが少ないのだろうと予想はつきますが、民間とは言え資格保有しているOMAや国家資格である看護師と、視能訓練士とではどう違うのでしょうか。
知識の違い
視能訓練士は数年間学校に通い眼科領域の勉強をしているだけに、眼についてはたくさんの知識を兼ね備えています。
OMAも民間資格ですが、少し自宅で勉強することで取得できる資格ですので眼科領域全体の知識があるわけではなく、視力検査を中心に理解している程度であることが多いです。
また国家資格である看護師は眼科の知識量が多いように感じますが、あくまで眼科の特に検査については眼科で勤めて初めて検査したという人がほとんどであるため、疾患などについて知っていても検査についてはOMAより知らない可能性もあります。
つまり視能訓練士は眼科検査のスペシャリストである眼科検査員
本来眼のスペシャリストは医師ですが、眼科検査に関しては視能訓練士が眼のスペシャリストだと言っても過言ではありません。
たまに「ICLやレーシック手術のための検査は視能訓練士が担当している」事を強調している眼科もありますが、それは「当院はしっかりと知識を兼ね備えた国家資格保有者が検査しています」というアピールです。
視能訓練士はまだ資格を持っている人が足りていないため、眼科に在籍していない場合もあるので視能訓練士の在籍を誇りに思う医師もいます。
まとめ
視能訓練士という職業について、仕事内容と合わせて解説しました。
視能訓練士は誰よりも眼科検査のスペシャリストです。視能訓練士という職業が世の中にもっと浸透されることを願ってます。
**最近人気のICLの検査ももちろん視能訓練士が検査します。どんな内容検査しているかぜひ知ってみてくださいね**