ICLとは何か、どんな人が手術を受けられるのかを解説します。
遠くのものが見えずに生活不便している近視の方に知っていただきたい情報です。
少し前にLASIKが大流行しましたが、今では近視矯正手術でも「眼内コンタクトレンズ・ICL」が人気上昇中です。では「ICL」とは一体どんな手術なのでしょうか?
そこでここではどんな人に手術を受けられるのか、メリットやデメリットを解説しながらICLの特徴について説明していきます。
この記事を読むと自分がICLの手術を受けられるかどうかがわかり、ICLの基礎知識も身につき、近視の悩みを解決する第一歩となりますのでぜひ最後まで読み進めてみて下さい。
ここでわかること
・ICL手術とは何か
・どんな人が手術を受けられるのか
・ICLのメリットやデメリット
【自己紹介】
眼科勤続年数・約15年の現役視能訓練士(国家資格保有の眼科検査員)です。
関東の端っこの小さい病院で細々とICL手術に関わっています。
ICL手術を受けて裸眼で生活できるようになって喜ぶ人を多く見てきました。
ICLについて普段から説明していることを中心に記事を書いていきます。
**近視はどう矯正するかについてもこちらに記事を書いています**
眼内コンタクトレンズ・ICLとは
ICLとは遠くが見えにくくいつも眼鏡やコンタクトレンズで生活している近視や乱視がある人に向けておこなう近視矯正手術方法の一つです。
眼の中にコンタクトレンズ・ICLを挿入することで近視を矯正し、眼鏡やコンタクトレンズ生活から解放されるため、近年人気を呼んでいます。
震災や災害時に備えて見えるようになっておきたい!
コンタクトって毎月地味に費用がかかるんだよね・・
見えにくいって本当に不便ですよね。
ICLは眼鏡やコンタクトレンズを煩わしく思う人は近視矯正方法がどんなものなのか詳しくみていきましょう!!
眼内コンタクトレンズ・ICL手術とは
一時期ブームになったLASIK、これは目の表面の角膜を削るので抵抗がある・・とためらう方や、近視が強すぎてLASIK不適応だと言われて途方に暮れていた方には眼内コンタクトレンズ・ICLという選択もあります。
ICLはソフトコンタクトレンズのような柔らかい素材で出来ていて、目の中に茶目(虹彩)と、その奥の水晶体の間にコンタクトレンズレンズ(ICL)を入れます。
正面から見ると、白目と茶目の境目あたりに切り込みを入れてレンズを挿入します。
手術自体は片眼10分程度とあっという間に終わります。
LASIKとの違いは?
近視矯正手術のひとつであるLASIKがありますが、ICLとどちらが良いの?と迷われている方は多いかと思います。違いを以下にまとめてみました。
LASIK | ICL |
角膜を削って矯正 | 眼の中にICLを入れて矯正 |
不可逆 | ICLを取り出せば元の眼の状態に戻る |
強度近視不可 | 強度近視も可能 |
手術時の眼内炎などのリスクがない | 手術時の眼内炎などのリスクがある |
近視の戻り グレアハローや ドライアイの懸念 | グレアハローの懸念 |
費用が安い | 費用が高い |
LASIKとの大きな違いは、LASIKは角膜を削って形を変えることに対して眼内レンズは眼の中に入れることです。
ICLはもし将来的に取り出すことになれば元の目に戻る可逆的な手術です。ただしLASIKは手術時に眼の表面しか触ることはないですが、眼の中にコンタクトレンズを入れる手術方法は眼内炎と言ってリスクのある合併症を起こす可能性がゼロではありません。
そしてLASIKで近視が強すぎて手術不可と言われた方でもICLは可能です。強度近視でも対応可能なので、手術適応になる可能性は高くなります。
手術後の見え方については、LASIKは手術後ドライアイだったり、グレアハローと言って光の見え方に違和感を持つようになるデメリットもありますが、ICLでもそれらのデメリットはあるもののLASIKより感じにくいようです。そして手術後の近視の戻りがあるLASIKと違って、ICLは術後何年たっても見え方が維持されると言われています。しかも術後の見え方の質はLASIKよりICLの方が良いと言われているので見え方の質にこだわる方はICLがお勧めです。
ただしICLは手術費用が高く、LASIKの方が安く手術を受けられます。
手術の適応条件・どんな人が手術受けられるか
ではICLはどんな人が手術を受けられるのでしょうか?自分が当てはまるかどうか見てみてください。
20歳前後~40歳前後の年齢の方
病院によって多少前後しますが、おおよそ20歳前後~40歳前後あたりを適応年齢としているようです。
近視は20歳前後まで進行する可能性があることより、あまり若くにICL手術を受けても近視が進行して度数が合わなくなってしまう可能性があります。
また、40歳前後より老眼を自覚し始める方が出てきます。遠くが見える人は近くが見えにくくなるので結局眼鏡が必要となることがあり、絶対に禁忌というわけではないものの適応外にされる可能性があります。
**ICLと老眼についての記事もあります**
中等度から強度の近視や、乱視のある人
LASIKは強度近視(主に-6.00以上)は適応外とされますが、ICLは強度近視も適応となり-20.00くらいの近視でも検査結果によっては手術可能になるようで、乱視も-4.00くらいまで手術可能です。
反対に、軽度の近視は適応にならないこともあります。
どんな人に向いているか?
遠くが見えなく困っていてどうにかならないかと悩んでいる人の大半は検討して良いでしょう。
震災や災害に備えて裸眼の状態でも見えるようにしておきたい方、コンタクトレンズや眼鏡が煩わしい方、またスポーツ選手など近視で困っている人であればどんな人にもおすすめします。
逆に眼鏡が大好きな人や、コンタクトを不便に思っていなかったり近視に困っていない方は無理に手術を受ける必要はありませんし、完璧主義で見え方にこだわりがあったり少しの違和感も許せないような方には向きません。
ICL手術のメリット・デメリット
ICL手術にあるメリットとデメリットもしっかりと理解することが大切です。
眼内コンタクトレンズ・ICLのメリットは?
以下にメリットをまとめてみました。
取り出し可能 | 目を元の状態に戻せる |
強度近視でも対応可能 | -10.00以上でも手術適応 |
見え方の質が高い | ドライアイやグレアハローなどの心配も少ない *多少起こり得る |
近視の戻りがない | 手術後の見え方を長期間維持できる |
紫外線カット | HEMAとコラーゲンの共重合体素材「コラマー」から作られている これは光の反射を生じにくく紫外線も90%以上カットする特性がある |
他 | お手入れ不要 |
何かあった時には眼の中に入れたICLを取り出して元に戻せることは大きなメリットです。また見え方の質も良く、長期間維持できることも魅力的です。
眼内コンタクトレンズ・ICLのデメリットは?
ではデメリットはどんなことが挙げられるのでしょうか。
手術受けられるまで時間がかかる | レンズ在庫がないと手術まで数カ月待つ可能性 |
自費診療 | 全額自己負担のため、費用が高い *医療費控除を利用できることがある |
目の中に入れる手術であること | 眼内炎が起こり得る |
合併症が起こり得る | グレアハローが起こり得る |
自費診療なので費用が高いことが挙げられます。
また眼の中にICLを入れる手術なので、眼内炎といって眼の中で炎症が起こる可能性はゼロではありません。加えて術後の見え方も慣れるまでは違和感を感じる事や、グレアハローと言って光の見え方がいつもと違いギラギラしていたり眩しく感じることもあります。
あと性格面でもちょっとした条件があり、神経質な人には向きません。
見え方に完璧を求めている人は止めておいた方が良いでしょう。
どんなに優れたものでも限界はあるので、「裸眼で物が見えると嬉しい」くらいのゆるい気持ちでいる方が眼に馴染んで良く見えるようになる傾向があります。
**こんなコラムも書いています**
病院受診の流れ
ICL手術を受けたいと思ったらまずは病院受診するところから始まります。
でもいきなり行くのは抵抗があってもおかしくないので、病院での流れをお伝えします。
適応検査
基本は最初予約を取ってから病院に行きます。
最初は適応検査と言って、視力や眼圧、目の近視度数がどれくらいあるのか、目の中にレンズを入れられるだけのスペースがあるかを検査します。その結果の元医師が診察で手術ができるかどうか、手術はどんなものなのか解説をしてくれます。
**適応検査を無料でおこなってくれる病院もあります**
手術のための検査
適応検査で手術可能だと言われた方は、後日視力検査に加え、眼の複数検査をします。他、採血や心電図などの内科検査する事もあります。
事前準備として正しく検査をするためにコントタクトレンズは決められた期間外す必要があります。検査当日は視力検査で細かく近視度数を調べ、手術後にどんな見え方を希望するのかを検査員と話しながら見え方確認して、どんな度数のレンズを入れるか決定していきます。
眼内コンタクトレンズ度数決めるための視力検査のあと、調節麻痺剤と言って点眼して目の度数を調べます。人は遠くを見たり近くをみたりするときにピントを合わせて物を見ますが、このピント合わせすることが検査結果に影響してしまうため、ピント合わせの力を取り除く点眼薬・調節麻痺剤を使って正しい近視や乱視度数を調べます。
*施設によって検査内容は違いますのであくまで一例です。
この検査は時間もかかり、効果が持続するので長い時間ピント合わせができず見えにくい状態になるため、病院によっては省略するところもあるようです。
しかしきちんとした検査結果を出すことが手術後の見え方に影響しますのでしっかり検査している病院を選ぶことをおすすめします。
あと、視能訓練士が検査しているかどうかが大事なポイントとなります。
視能訓練士とは、眼の検査など眼の事に関して専門的に勉強して国家資格を取得している人たちを指します。眼科には視能訓練士が在籍していない所もあり、そういう所は資格のない方が検査していますので注意です。
**ICL検査についてここにも記事を書いているので読んでみてください**
手術当日
手術当日は手術のための準備があるので、実際の手術時間より少し早めに来院します。
手術自体は片眼10分程度、連続して反対の眼の手術をするか少し休憩してからおこなうかなどは病院によって違いますが、おおよそ滞在時間としては2時間程度でしょう。
手術後の診察・検査
手術後は定期的な診察・検査を受けに行きます。
特に手術直後は頻回に病院にいくことになりますが、少しづつ間隔をあけて受診をするよう促されます。検査は視力検査や他の眼の検査などを軽くおこないます。
病院に行ったらすぐに手術を受けさせられるなんてことはないですし、無理な勧誘をしている所もないのではないでしょうか?
まずは自分が手術受けられるかどうかだけ聞きに行く、くらいの気持ちで受診しても全然大丈夫です。
よくある質問
よくある質問もまとめてみます。
眼内コンタクトレンズ・ICLって種類あるの?
日本ではICLという眼内コンタクトレンズを取り扱っている施設がほとんどかと思います。
中には、アイクリルという眼内コンタクトレンズを取り扱っている施設もあるようです。
また施設によっては40歳代以上の老眼が始まる世代の方向けの遠近両用眼内コンタクトレンズ・IPCLの取扱があるところもあります。
手術後いつから仕事できる?
手術翌日は診察を受けなければならない病院がほとんどです。
人によっては手術直後は目の表面(角膜)が腫れたり眼圧が上がったりするため見えにくくなる可能性もあり、これは一過性の症状なので割とすぐ良くなりますが2~3日ほどは見えにくさがある可能性があることを念頭にお仕事の予定を立てると良いでしょう。
また力仕事や車を運転する仕事の場合は病院に相談が必要です。
手術は痛くない?
点眼麻酔を使って手術をするため痛みはほとんど感じないようです。
しかし、引っ張られたり押されたるする感じがしたり、中には違和感を感じたり痛み出したりすることもあるようですが途中麻酔を追加したりして対応してくれます。
本当に見えるようになるの?
手術前検査でしっかり度数合わせを行っていれば、大きく間違った度数のレンズを入れることもないのでほぼ希望通りの見え方になります。しかし、完璧とはいかないのと、その日の体調などで視力は変動しやすいためざっくりとメガネなしで生活できるようになる、という認識でいることが大切です。あまりに過度な期待をしたり、少しのズレも許容できないくらい完璧を求めている方にはそもそもICLの手術には不向きです。
また、グレアハローと言った光の見え方に違和感を感じる方がいて、眩しくて見えない等の訴えが出ることがあるようです。こういったものはレンズの特性から起こるものなので見え方に慣れていくしかありません。
**こんな記事も書いています。良かったら読んでみてください**
老眼の心配はどうすれば良い?
40歳を超えると個人差はあるものの少しずつ老眼が始まり、それはどうやっても食い止めることは出来ません。遠くを良く見えるようにすると近くのものが見えにくくなる、それが老眼です。ICLを入れて遠くをよくみえるようにすると、40歳超えたあたりから近くの見え方に違和感を感じ始めます。
ただし、今現在まだ20歳代であれば老眼は10年以上先の事なのであまり気にしなくて良いと思います。
いずれ老眼が始まったら、近くのものを見るときだけ眼鏡をかけるなどの対応は必要になってきますが、これは眼内レンズの有無に関わらずみんな同じです。
**老眼用のICLもあります**
金額は?
自費診療となりますので病院によって費用は様々ですが、相場は両眼で50~80万くらいを設定している病院が多いようです。乱視用であれば両眼で追加料金10万円くらいが相場のようです。
また、医療費控除が利用できるので年末調整まで領収書は保管しておきましょう。
**東京で手術を受けられる施設について詳しくは以下の記事で書いています**
**大阪で手術を受けられる施設についてはこちらの記事に書いています**
まとめ
眼内コンタクトレンズ・ICLについて解説しました。
手術をするという恐怖がありつつも、ICL手術を受けて裸眼で見えるようになって喜んでいる方が多くいます。近視で悩んでいる人にはぜひ検討してみてください。